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多嚢胞性卵巣症候群

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多嚢胞性卵巣症候群(たのうほうせいらんそうしょうこうぐん)とは卵巣の中に卵胞(卵子の入った袋)がいくつもでき、排卵障害を引き起こす病態のことです。

「Polycystic ovary syndrome」という英語の病名を略して、PCOSと呼ばれます。

PCOもよく聞く言葉ですが、PCO(多嚢胞性卵巣)は、『卵巣内に未熟な卵胞が沢山ある卵巣の状態』を指します。

 

通常、卵巣の中にはたくさんの卵子があります。

卵子は卵胞と呼ばれる袋に包まれていて、卵巣のなかで毎月1個ずつ卵胞が成長して、卵胞が約20mmぐらいの大きさまで成長すると、卵胞がやぶれて排卵されます。

しかし、PCOSでは、卵巣のなかで卵胞が同時に複数個も膨らんでしまいます。

そのため、どの卵胞も十分なサイズまで成長ができず、排卵がおこりにくい状態になってしまうのです。

 

多嚢胞性卵巣症候群の診断基準

多嚢胞性卵巣を持っている女性は2割いるといわれていますが、全員が「PCOS」と診断されるわけではありません。

日本の診断基準では、以下の3項目をすべて満たす場合に、多嚢胞性症候群と診断されます。

 

1.月経異常

無月経、稀発排卵、無排卵

 

2.検査で高アンドロゲンが見られる

男性ホルモンが多い

 

3.多嚢胞性卵巣が見られる

経膣超音波検査にて卵巣に多数の小さい卵胞がネックレス状に見られる

 

多嚢胞性卵巣症候群の症状

特徴的な症状には以下のようなものがあります。

 

1.月経不順や無月経(排卵がおこりにくいため)

2.多毛、にきび、低音声など(血液中の男性ホルモンが増加するため)

3.肥満(欧米の方には多いですが、日本人には少ないようです)

4.月経過多や出血がとまらないなどの症状(黄体ホルモン分泌不全)

5.不妊(排卵障害のため)

 

など

 

西洋医学での治療法

1.生活習慣改善

食事、運動療法を行っていきます。

 

2.排卵誘発剤

排卵誘発剤で卵胞の発育を促し、排卵をうながします。

 

3.ホルモン剤

月経を周期的におこすような治療を行います。

 

4.腹腔鏡下手術

卵巣の表面に小さな穴をたくさんあけ、排卵を促すと方法も行われることがあります。

 

中医学では

PCOSになる体質を改善しながら、様々な症状に対処していきます。

 

1.気血不足、腎虚

「気」は体を動かす元になるもの、「血」は身体の各部を巡り、栄養を供給しているので、血の不足は機能の低下につながります。

また、腎虚とは「生命エネルギー不足」の状態を言います。

「腎」には、人の成長や発育を促進したり、性行為、妊娠、出産などの生殖機能や、若々しさを維持する生命エネルギーが蓄えられると考えるのですが、そのエネルギーが足りない状態を言います。

 

◆こんな症状がみられます◆

虚弱、顔色痰白、冷え、性欲低下、不妊、月経不順、無排卵 など

 

対処法

良い血を補って身体に巡らし、生命エネルギーを補う、漢方を使っていきます。

 

2.痰濁瘀血

痰濁とは身体の余分な水分が身体にこびりついて身体に悪影響を与える状態のこと

瘀血とは体の血の巡りが悪くなり、良い血が体を巡らない状態のことです。

 

◆こんな症状がみられます◆

肥満、月経不順、舌の色がくすんでいる など

 

対処法

痰濁を取り除き、良い血を身体に巡らす漢方を使っていきます。

 

3.肝鬱気滞

肝鬱とはストレスなどで、気の流れが悪くなって、イライラや不安感、落ち込みなどの状態になっていることを言います。

 

◆こんな症状がみられます◆

プロラクチンが高い、月経不順、月経痛、イライラ、憂うつ、胸の脇が張った感じ、舌の色白っぽい

 

対処法

気持ちを落ち着かせ、気を巡らせる漢方を使っていきます

 

4.脾虚痰湿、痰化湿熱

脾虚痰湿は、胃腸機能の低下によって水分代謝が滞り、体内に余分な水が溜まった状態を言います。

痰化湿熱は体内にたまり過ぎた不要な「水」が熱を帯び、気や血のめぐりを邪魔して、様々な不調が起こっている状態です。

 

◆こんな症状がみられます◆

普通体型または肥満、冷え、下痢しやすい、便秘、舌の色白っぽい

毛深い、声が低い、ニキビ、口が渇く

冷たいものをのみたがる、暑がりなど

 

対処法

胃腸の働きを良くし、体に溜まった余分な水分をとり、水の巡りを良くする漢方を使っていきます。

 

また、PCOSの多くの方は、痰濁?血の体質を持っています。

体質を改善していくことで、PCOS以外の様々な不調も改善されていきます。

漢方は一人ひとりの症状や体質に合わせたものを選んでいきますので、身体に無理な負担をかけることはありません。

ぜひ漢方の専門家にご相談ください。

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この記事の執筆者

新海薬局

薬剤師 丹沢 仁美
Hitomi Tanzawa

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